⑥「~できないことはない」などの「二重否定」は使わず、やさしい日本語で伝える 〜今日からできる!日本語を使って外国人とコミュニケーションをとるコツ〜

新米日本語教師の大竹です!

富士山メソッドプロジェクトの担当者として、外国人の方々の生活サポートや日本語指導、外国人が働く企業のサポートをさせていただいております。

今回も、急増中の在留外国人の方々とのコミュニケーションを円滑にする言語・手法として注目される「やさしい日本語」をもとにしながら、今日からできる簡単なコツ第6弾をご紹介させていただきます。

⑥「~できないことはない」などの「二重否定」は使わず、やさしい日本語で伝える

「二重否定」とは、どんな表現?

まずは今回のテーマである「二重否定」について整理します。

二重否定とは、その名の通り、一つの文章の中に否定の言葉を2回(二重)使用することです。
否定語を2回使うことで「否定を否定する」という状態になりますので、二重否定は「肯定」を示す表現であるということが大きな特徴です。

以下に二重否定表現の例文をまとめました。

<「二重否定」の例文>

  • 小学生でも できないことはない。
  • あなたの言っていることは、わからなくはない。
  • 言いたいことが ないことはない。
  • 辛い食べ物が 食べられないわけではない。
  • あの人が言っていることは、正しくないこともない
  • ミスがないとも限らない。      など

例文をお読みいただくと、「二重否定って意外と多く使っているな」と感じる方もいらっしゃると思います。
二重否定は会話の場面で使われることが多く、明確には言い切れない微妙なニュアンスを伝えたい時に使用することが多い表現です。

外国人の方は「二重否定」を聞くと迷ってしまう

外国人の方が二重否定を聞くと迷ってしまう理由は、とてもシンプルです。
否定が2回続くことによって、「否定なの?肯定なの?どっち…?」とわからなくなってしまうからです。

私もふとした時に、富士山メソッドプロジェクトの外国人の方々に二重否定を使ってしまうことがありますが、そのまま伝わったことは一度もありません。言い換えが必要になります。
日本人でも二重否定を聞いて理解しにくい時がありますので、外国人の方々にとっては、二重否定を会話の中で理解するのは至難の業です。

日本人が「二重否定」使う理由

これまでに投稿させていただいた「コツ④ 擬態語・擬音語」や、「コツ⑤ あいまいな言葉」のブログでも説明させていただいた通り、日本人は相手の心境や感覚、周囲や自然の状況、雰囲気を慮って言葉を使います。

二重否定も同様、肯定する言葉を直接的に使わずに、相手を傷つけない、刺激しないようにしながら、伝えたいことを伝える(自己主張する)ために使用する表現方法です。

二重否定は日本語の中でもかなりまわりくどく、誤解を与える可能性がある表現です。
それなのに二重否定を使用する時というのは、「あいまいにしたい」「やんわり伝えたい」「肯定だが、完全な肯定ではなく迷う」という心理が無意識でも強く働いている時です。

この状況を上手に解決するために使用されるのが二重否定ですので、二重否定もやはり相手を思いやりつつ、自分を控えめに表現する「日本人らしさ」を顕著に表している言葉であるといえます。

二重否定 → やさしい日本語で表現する方法

では、二重否定をやさしい日本語に換えて伝えるにはどうしたら良いでしょうか。
私は重要なポイントが3つあると考えています。

① まずは「できます」などの肯定表現を使って伝える

これは、前回の「コツ⑤あいまいな言葉」でも最初に紹介した重要ポイントです。

相手が迷わないよう、「できます」「わかります」などの明確な言葉を使って肯定を表現しましょう。
日本語の習熟度がまだ低い外国人の方と会話をする時には、二重否定は使わないようにしましょう。

② 肯定を伝えた後、「でも」を使って説明をする

なにか理由や事情があるため、はっきりと肯定しきれないのが二重否定です。
その理由や事情を伝えることも大切なコミュニケーションの一部ですので、肯定を伝えた後に「でも」を使って説明をしましょう。

以下のように表現すると良いと思います。

  • 「辛い食べ物は食べられますか?」
      →「はい、食べられます。でも、あまり好きではありません。」

③ 明確に肯定できないときは、「〜かもしれません」を使う

はっきりと答えられない状況で、あいまいに表現したい時や、可能性があるということを伝えたい時は「〜かもしれません」を使うようにしましょう。

「〜かもしれません」は外国人の方が日本語を学ぶ時に、比較的に早い段階で学習することが多い表現です。
「たぶん」「おそらく」「〜だと思います」よりも、「〜かもしれません」を使った方が、外国人の方に伝わりやすいです。

具体的には以下のように言い換えると良いです。

  • 「ミスがないとも限らないので、チェックをお願いします。
      → 「ミスがあるかもしれません。
    チェックをお願いします。

二重否定 → やさしい日本語で表現する練習をしましょう!

最後に、二重否定をやさしい日本語で表現する練習をしてみましょう。
ぜひチャレンジしてみてください!

※上記は言い換え例です。答えではありません。
  やさしい日本語に明確な答えはないため、参考としてご活用ください。

おわりに

前回までのブログでご紹介させていただいた擬音語・擬態語や、あいまいな言葉などに比べると、二重否定はあまり使わないと思います。
しかし意識をしておかないと、明確に答えられない時などに無意識で二重否定を使用することがあると思いますので、特に外国人の方とコミュニケーションをとる際に、今回の内容を思い出していただけますと幸いです。

そして今回も、二重否定を学ぶことを通じて、日本語の奥深さと、言葉と文化の強い結びつきを感じました。
日本語を学んでいると、日本人は「和」を重んじ、相手や集団に嫌な気持ちが生まれないように表現を工夫していった結果、様々な表現が生まれたということが分かります。
多種多様な表現があり、場面や状況によって使い分けるが必要があることが外国人の方にとって習得が難しい理由ですが、同時に日本の誇らしい文化であると思います。

今後はより多くの外国人が日本で暮らすことが予想されています。
これからは外国人の方々に対しても思いやりをもち、やさしい日本語を用いたコミュニケーションを通じて外国人の方々と共生することができれば、やさしい日本語も世界に誇れる日本の一つの文化になるのではないかと思います。

次回以降も外国人の方とコミュニケーションをとる際に少しでもお役に立てるよう、「やさしい日本語」を使用するコツをお伝えさせていただきます。よろしければ、次回もぜひご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


大竹 岳

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