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⑧ 難しい日本語は「ルビ」と「(かっこ書き)」を使って説明する 〜今日からできる!日本語を使って外国人とコミュニケーションをとるコツ〜
新米日本語教師の大竹です!
富士山メソッドプロジェクトの担当者として、外国人の方々の生活サポートや日本語指導、外国人が働く企業のサポートをさせていただいております。
今回も急増中の在留外国人の方々とのコミュニケーションを円滑にする言語・手法として注目される「やさしい日本語」をもとにしながら、今日からできる簡単なコツ第8弾をご紹介させていただきます。
(「やさしい日本語」の詳細は、こちらをご覧ください👉 https://fujisan-method.jp/info/851/)
コツ⑧ 難しい日本語は「ルビ」と「(かっこ書き)」を使って説明する
やさしい日本語へ変換せず、「難しい日本語(普通の日本語)」のまま覚えるべき言葉もある
まず前提として、日本語は「理解・習得が非常に難しい言語」と言われています。
そのため、これまでのブログでご紹介させていただいている方法を用いて、難しい日本語を「やさしい日本語」にすることが、外国人の方々とコミュニケーションにおいてとても重要です。
(難しい言葉とやさしい日本語の区別や、基本的な変換方法については、コツ①をぜひご覧ください。)
しかし、日本で生活や観光等をするためには、難しい日本語(普通の日本語)のまま覚えるべき言葉もあります。
難しい日本語(普通の日本語)のまま覚えてもらわないと、災害が発生した際にとっさの対応ができず危険にさらされたり、公共施設、公共交通機関などでルールやマナーを守れず、周囲の人から嫌遠されてしまうことにつながってしまいます。
日本語がわからないだけでこのような状況になってしまうことは、誰にとっても望ましくありません。
今回は、難しくてもそのまま覚えるべき日本語の具体例と、それらを外国人の方に伝えるためのポイントをご紹介していきます。
そのまま覚えるべき「難しい日本語」とは、どんな言葉?
外国人の方に覚えていただく必要がある言葉の例は、以下の通りです。
<災害時>
- 地震/余震/津波/火災/台風/大雨/洪水/暴風
- 警報
- 避難所 など
<防災・防犯>
- 立入禁止 / 進入禁止
- 火気厳禁
- 飛び出し注意 など
<公共施設>
- 案内所
- 禁煙
- 飲食禁止 / 撮影禁止
- 土足厳禁
- 非常口 など
<公共交通機関>
- 新幹線/電車/地下鉄
- 改札
- 切符
- 優先席
- 駆け込み乗車禁止
- 通話禁止 など
こうして例を挙げてみると、「災害」に関する言葉の他には、「ルール」「マナー」に関する言葉がほとんどであることに気がつくと思います。そしてそれらの言葉は、様々な場所に張り紙や電光掲示板などで掲示されています。
最近は外国人の方にも伝わるようなイラストや多言語表記を使用した掲示物等も増えてきていますが、外国人の方には理解が難しいものはまだまだ多くあります。
日本らしい「安全・安心・清潔・思いやり」などを守っていくためにも、例として挙げたこれらの言葉とその意味を覚えてもらうことは、とても重要です。
「ルビ」と「(かっこ書き)」を使った説明は、外国人を助ける重要な工夫
難しい言葉を外国人の方々に伝えるためにまず必要なのは、「ルビ」です。
ルビとは「ふりがな」のことです。
「漢字は読めないけれど、ひらがなは読める」という外国人はとても多いです。
難しい言葉に限らず、漢字を使った文章を作るときは、必ずひらがなでルビを振りましょう。
Woadなどで文章を作成する場合は、簡単にルビを振ることができます。
■ 余震 → 余震
これだけでもわかりやすくなりますが、大切なのは意味を伝えることです。
そこで次に必要なのは、難しい言葉の後ろに「(かっこ書き)」をつけて、意味を説明することです。
■ 余震 → 余震(おおきな 地震の あとに くる ちいさな 地震)
「(かっこ書き)」の中に難しい日本語を使ってしまうと、意味が伝わらなくなってしまうため、最終的にはやさしい日本語を用いた説明となります。
また、(かっこ書き)内を「英語」や「外国人の母国語」にすると、より効果的な場合もあります。
しかし、翻訳アプリを用いて言葉を変換した場合には注意が必要です。正しく直訳できない日本語も数多くあります。
上記の理由から、私は「やさしい日本語」でのかっこ書き説明を推奨しています。
難しい言葉をそのまま覚えてもらうためには少し手間がかかりますが、上記のように「ルビ」+「(かっこ書き)」のセットで示していく方法が有効です。
「会話場面」で実践できる、難しい日本語を覚えてもらう工夫は?
ルビとかっこ書き説明は、「文字」で言葉を覚えていただく際に実践すべきことです。
しかし当然ながら、メモも貼り紙もスマートフォンも近くに無い「会話」場面で、外国人の方に難しい日本語を覚えていただきたい場合もあります。
会話場面でおすすめの方法は「実演」を交えた説明です。
例えば次のように行います。
■外国人の方に、あえて室内に土足で入室するよう促す(実演)
→「ここで靴を脱ぎます。靴はダメです。ここは「土足厳禁」です。」
■災害を知らせるアラートを突然鳴らす等のアクションを起こす(実演)
→「危ないです!急いで外へ出ます。「避難」します。」
このように「実演」を交えながらやさしい日本語で説明し、最後に難しい日本語を示すという方法を用いると、会話の中でも覚えてもらえる可能性が高まります。ぜひ実践してみてください。
「ルビ」と「(かっこ書き)」を使って、難しい日本語を説明する練習をしましょう!
最後に、「ルビ」と「(かっこ書き)」を使って、難しい日本語を説明する練習をしてみましょう。
ぜひチャレンジしてみてください!
<例>
・余震 → 余震(おおきな地震の あとに くる ちいさな地震)
<問題>
- 警報
- 禁止
- 避難所
- 案内所
- 切符
<答え(言い換え例)>
- 警報 → 警報(とても あぶないことを おしえる れんらく)
- 禁止 → 禁止(しては いけません)
- 避難 → 避難所(あぶない ときに みんなが にげる ところ)
- 案内所 → 案内所(わからないことを おしえてくれる ところ)
- 切符 → 切符(電車や 新幹線に のるための チケット)
※上記は言い換え例です。答えではありません。
やさしい日本語に明確な答えはないため、参考としてご活用ください。
おわりに
今回ご紹介させていただいた内容は、日本で生活をする外国人の方々にとって非常に大切だと私は考えています。
災害に関する言葉や、ルールやマナーに関わる言葉などは、日本での生活が長くなれば自然と身についていくものかもしれません。実際に私達がサポートしている外国人技能実習生の方々も、日本に住み始めて半年ほど経過すると、こちらが説明しなくても、今回ご紹介したような重要な言葉を覚え始めます。
しかしそれは、技能実習生には「入国後講習」という日本への入国後に約1ヶ月間かけてじっくり丁寧に訓練できる期間があっての話です。
入国後講習のような訓練期間を経験せず日本に在住している外国人の方々にとっては、難しい日本語の読み方や意味、災害の怖さ、日本特有のルール・マナーを理解することは、とても困難なことだと思います。
そのような中で、今回ご紹介した「ルビ」「(かっこ書き)」「実演」などの工夫を取り入れて、資料の作成や会話を行うことで、確実に伝わりやすくなると実体験から感じています。
ぜひ外国人に関わる多くの方々に実践していただけますと幸いです。
次回以降も外国人の方とコミュニケーションをとる際に少しでもお役に立てるよう、「やさしい日本語」を使用するコツをお伝えさせていただきます。よろしければ、次回もぜひご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
大竹 岳