⑦会話や文章の最後を「です・ます調」の形にする 〜今日からできる!日本語を使って外国人とコミュニケーションをとるコツ〜

新米日本語教師の大竹です!

富士山メソッドプロジェクトの担当者として、外国人の方々の生活サポートや日本語指導、外国人が働く企業のサポートをさせていただいております。

今回も、急増中の在留外国人の方々とのコミュニケーションを円滑にする言語・手法として注目される「やさしい日本語」をもとにしながら、今日からできる簡単なコツ第7弾をご紹介させていただきます。

日本語で使われる「敬語」には、どんな種類がある?

「です・ます調」とは、どんな表現?

今回のキーワードである「です・ます調」とは、その名の通り「〜です。」「〜ます。」で終了する会話や文章のことをいいます。

です・ます調は敬語の一種である「丁寧語」であり、相手が目上の人の場合や、あまり親しくない人の場合に用いることがある言葉遣いです。
また、大勢に対して丁寧に発信する場合にも用いることが多く、相手への思いやり・敬意を表現する言葉として、日本では多用されています。

日本人は幼少期から教育されていることが多く、敬語の導入として最初に教わる敬語が「です・ます調(丁寧語)」であることも多いです。

日本人は「会話や文章の最後の言葉」をどうやって使い分けている?

会話をしたり、メールなどの文章を作成したりしている時、コミュニケーションをとる相手を思い浮かべながら「どうやって伝えようかな」「言葉遣いはどうしようかな」などと考えることは、皆さんにもよくあると思います。

しかし、「文末の表現はどうしようかな?」と悩み考えることは、日常の中でほとんど無いと思います。
社内文書や論文では「~だ。」「~である。」を使用したり、親しい方との会話では「タメ口」を使用したりと、ほとんど無意識で使い分けていると思います。
毎回正しく使用できているかは別として、私たちには「相手との関係や状況に応じて文末表現を使い分ける」という習慣がそれほど身についているということです。

そして、その無意識で使い分けている文末表現は「敬語」と密接に関係しており、敬語は5種類に分類されています。(2024年10月現在)

それぞれの敬語の目的や違いは、以下の通りとなっています。

敬語(文末表現)の使い分けは、日本の素晴らしい文化であると同時に、外国人を困らせてしまう表現

上記で示したように、相手との関係性や状況によって敬語などの使用を使い分けることで、文末表現は変わってきます。
その文末表現の変化や敬語は、礼儀を重んじる日本を象徴する素晴らしい文化だと私は思います。

しかし外国人とのコミュニケーションの観点から見ると、これらの「敬語」や「だ・である調」「タメ口」の混在が、外国人の方々を困らせます。

富士山メソッドプロジェクトでサポートしている外国人の方々に「日本語で難しいのと感じるもの何ですか?」と聞くと、皆さん口を揃えて「敬語と漢字」と答えます。
敬語は漢字と並び、理解が最も難しい日本語のようです。

例えば、市役所や病院、お店や電話などでよく耳にする以下のような言葉は、実は外国人の方々にとって非常に難しいです。

  • 「本日はどうなさいましたか?
  • 「こちらに氏名ご記入お願いいたします。
  • 「◯日の◯時に お宅お伺いいたします。
  • 「こちら熱いので、お気をつけてお召し上がりください。

残念ながら上記のような表現は、日本語の学習があまり進んでいない外国人の方には伝わりません。

外国人だからといって差別をせず、思いやりと敬意を持って丁寧な言葉を使ったとしても、それが伝わらないどころか相手を困らせてしまっては元も子もありません。

会話や文章は「です・ます調」の形をつくる

では、どうすれば外国人の方に伝わるやさしい日本語になるのでしょうか。

まずは文末表現を「です・ます調」に統一しましょう。シンプルですがとても大切です。
そして、より伝わりやすくするためには、「簡単な言葉+です・ます(丁寧語)」の形で会話や文章をつくることがとても重要なポイントであると私は感じています。

具体的には、以下のように表現を変換すると良いです。

  • 「こちらに氏名のご記入お願いいたします。」 
       → 「ここに 名前 書きます。(書いてください)」
  • 「〇〇さんのお宅にお伺いします。」 
       → 「〇〇さんの 行きます。
  • 「こちら熱いので、お気をつけてお召し上がりください。
       → 「この食べ物は熱いです。気をつけて 食べます。

ここで「簡単な言葉とはどんな言葉?」という疑問が頭に浮かぶ方もいらっしゃると思います。

ここでいう簡単な言葉とは、「言う」「来る」「する」などの敬語ではない普通(基本)の形の言葉のことを指します。日本語能力検定(JLPT)のレベルにすると「N4〜N5」レベルの言葉です。
外国人に伝わる「簡単な言葉」についての詳細は、以下ブログでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
【コツ① 難しい言葉を避け、簡単な言葉を使う(https://fujisan-method.jp/info/991/)】

前述の通り、敬語は外国人の方にとって非常に難しい表現ですが、「です・ます」は日本語学習の比較的早い段階で学ぶことが多いです。
その点も踏まえると、外国人の方とコミュニケーションを取る際は「簡単な言葉+です・ます」を心がけることが、コミュニケーションにおいて非常に効果的です。

「です・ます調」に変換する練習をしましょう!

最後に、「簡単な言葉+です・ます調」で表現する練習をしてみましょう。
ぜひチャレンジしてみてください!

※上記は言い換え例です。答えではありません。
  やさしい日本語に明確な答えはないため、参考としてご活用ください。

おわりに

今回ご紹介させていただいたコツは、私たち日本人と外国人の両者にとって非常に大切なコツであると感じています。

「敬語は人と人との相互尊重の気持ちを基盤として、今後も大切に使用すべきもの」ということが、文化庁の『敬語の指針』には記されています。相手への敬意を示す言葉ですので、やはり相手に伝わらなかったら意味がなくなってしまうと思います。
しかし、かといっていわゆる「タメ口」で外国人の方と話をするというのも、日本らしさの観点からすると避けたいところですし、できれば日本で生活する外国人の方々にも、少しずつでも敬語に興味を持ち、理解し、使用できるようになっていただきたいとも思います。
そのような中で、日本語学習の初期に学んでいる外国人も多く、簡単なコツを意識すれば伝わる可能性が高い「です・ます調(丁寧語)」を使用することは重要であると私は思います。

実際に富士山メソッドプロジェクトでサポートしている外国人の方々の中には、敬語を理解できようになりたいと願って勉強をしたり、わからない敬語について質問をしたりしてくださる方が多くいます。
その姿を見ていると、私たち日本人や日本語を尊重していることを少しでも言葉で伝えたいという気持ちがあるように思います。
その思いに応えるためにも、私自身外国人の方々に伝わるやさしい日本語を引き続き学んでいくと同時に、敬語をはじめとした日本語の美しさ、奥深さも追求していきたいと思っています。

次回以降も外国人の方とコミュニケーションをとる際に少しでもお役に立てるよう、「やさしい日本語」を使用するコツをお伝えさせていただきます。よろしければ、次回もぜひご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


大竹 岳

メニュー