私たちの取り組み
⑫資料に「写真」や「イラスト」を使用すると、やさしい日本語になる 〜今日からできる!日本語を使って外国人とコミュニケーションをとるコツ〜

新米日本語教師の大竹です!
富士山メソッドプロジェクトの担当者として、外国人の方々の生活サポートや日本語指導、外国人が働く企業のサポートをさせていただいております。
今回も急増中の在留外国人の方々とのコミュニケーションを円滑にする言語・手法として注目される「やさしい日本語」をもとにしながら、今日からできる簡単なコツ第12弾をご紹介させていただきます。
簡単な言葉を使用するだけが、「やさしい日本語」ではない!
最近、お店や公共交通機関、職場などの様々な場所で外国人とコミュニケーションをとる機会が以前よりも増えている方が多いのではないでしょうか。
また、外国人と上手にコミュニケーションがとれずに悩まれている方もいらっしゃるかもしれません。
そのような中で、以前投稿した「日本語を使って外国人とコミュニケーションをとるコツ~「やさしい日本語」とは~」のブログでもご紹介させていただきましたが、日本国内に住む外国人の方々が求めている情報発信の言語は、「英語」や「翻訳した母国語」ではなく、「やさしい日本語」です。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/pdf/92484001_01.pdf
これまで日本語のコツシリーズで紹介した11個のコツを意識することで「やさしい日本語」をつくることができますが、外国人に伝わる簡単な言葉を選ぶだけが「やさしい日本語」ではありません。
今回は外国人とのコミュニケーションを円滑にする「写真」「イラスト」の使い方をテーマにコツをご紹介させていただこうと思います。
資料に「写真」や「イラスト」を使用すると、どんな効果がある?
こちらの資料は、富士山メソッドプロジェクトでサポートしている外国人の方々が住む家に掲示しているものです。

下の資料は、私達が使用している上で示した資料から、「イラスト」を除いた資料です。
ぜひ2つの資料を見比べてみてください。

いかがでしょうか?
↑上の2つの資料を見比べると、イラストがある資料の方が、内容が伝わりやすいことがわかると思います。
また、以下の2つの資料も見比べてみましょう。


↑この2つ資料で伝えたい内容は同じです。
しかし、イラストを使用し、かつ簡単な日本語を使っている資料の方が外国人の方々に伝わりやすいだろうと皆さん感じると思います。
全ての日本語の意味がわからなくても、「皆でご飯を食べるのか!」ということが伝わる可能性は高いです。
「写真」や「イラスト」などを資料に用いると、文章(日本語)が示す場面や対象が明確になるため、内容がとても伝わりやすくなるのです。
また、最近は比較的簡単に「動画」を作成することができるようになりました。
資料やWebページなどを作成する際は、イラスト・写真・動画等と簡単な言葉を合わせた「やさしい日本語」をつくると、外国人とのコミュニケーションが円滑になります。
「写真」「イラスト」を用いてやさしい日本語をつくる3つのポイント
ポイント① 仕事や生活の指導・伝達のための資料に有効なのは「写真」


外国人と一緒に仕事をする方や、生活の注意点などを外国人に伝えたい方におすすめなのは「写真」を活用することです。
写真によって、リアリティーのある情報を伝えることができます。 日本語教育においても「レアリア」「生教材」と呼ばれる“本物(実物)”を用いた指導が多くの場面で有効であると言われています。


資料内に日本語だけでなく写真(本物を映したもの)が入るだけで、外国人の理解は促進されます。
特に商品や部品、機材等の名称や使用方法を覚える必要がある「仕事」や、日本特有の細かいルールが存在する「生活」に関する指導・伝達については、写真を積極的に活用すると良いです。
全ての写真を用意することが難しい時は、以下の資料のようにイラストも併用しながら資料を作成しましょう。

実際に撮影した写真を使用できればベストですが、写真を用意することが難しい時もあります。
そのときは、無料でダウンロードできる写真を活用すると良いです。
私は以下のサイトを活用することが多いです。
■「写真AC」(フリー素材)
■「みんなの教材サイト」(国際交流基金)
ポイント② 案内資料や文章(日本語)の補足に有効なのは「イラスト」
イラストは、資料内に書かれた日本語の単語や文章を補うツールとして非常に有効です。
イラストにより日本語を補足・説明することができます。
また、外枠や背景が無いイラストも数多くあるため、写真に比べて資料内に挿入しやすいというメリットもあります。
資料で伝えたい内容に即したイラストが見つかった時は、以下のように積極的に活用すると良いです。

イラストについても無料でダウンロードできる便利なサイトがありますので、ぜひご活用ください。
■かわいいフリー素材集 「いらすとや」
■「みんなの教材サイト」(国際交流基金)
ポイント③ 写真やイラストと一緒に記載する日本語は「簡単な日本語」にする
写真やイラストによって日本語の意味は伝わりやすくなりますが、やはり簡単な日本語を使って資料を作ることも大切となります。
こちらは以前投稿した「コツ① 難しい言葉を避け、簡単な言葉を使う」でご紹介させていただきましたが、「簡単な日本語」とは、敬語を使わず、「言う」「来る」「する」などの普通(基本)の形を大きく変えない日本語のことです。
日本語能力検定(JLPT)のレベルにすると、N4〜N5レベルの言葉が簡単な日本語となります。
使いたい言葉が簡単なのか、難しいのかを知りたい時に活用できる便利なサイトを以下にご紹介してありますので、ぜひご活用ください。
イラストを用いたやさしい日本語の実用例
ここまで説明させていただいたポイントを押さえた外国人向けの資料は、現在様々なところで作成され、公開・使用されています。
著作権等の都合により写真よりもイラストを活用している資料が多いですが、どれも参考になるものばかりですので、ここではいくつかの資料を紹介いたします。
ぜひご覧いただき、外国人向けの資料作成の参考にしてください。





おわりに

今回は「写真・イラストの有効性」を紹介させていただきましたが、私はこの記事を作成しながら、2つのことを感じました。
まず1つ目は、外国人の方々に対してだけでなく、写真やイラストは伝える手段としてとても有効なのではないかということです。
日本語(文字)のみで相手に伝えることは尊いと思いますが、日本語(文字)に加えて写真やイラストなどを活用していく術を身につけることで、より多くの方と円滑にコミュニケーションをとれるようになると思いました。
ビジネスや子育てなどにも活かせるコツであると感じます。
2つ目は、相手に伝える時には「努力(手間)」を惜しまないことが大切で、そこに日本人らしさがあるのではなのではないかということです。
相手に伝えたい内容に合う写真やイラスト探し、それを資料内に挿入する行為は、正直手間がかかります。また、多くの時間を費やすこともあります。
写真やイラストだけでなく、これまで紹介してきた「ルビ(ふりがな)をふる」「文章を分かち書きにする」「擬音語・擬態語を使わない」「日付・時間の表現方法に気をつける」等のやさしい日本語をつくるための工夫は全て、相手に伝えるための一手間だと思います。
その一手間を惜しまず、相手を優先に考えた表現を追求したからこそ、日本にはここまで多くの礼儀作法や言葉・文字が誕生したのではないかと思いました。
私もやさしい日本語を日々実践し、相手に伝える努力や配慮を惜しまない人間になりたいと思いました。
今後も外国人の方とのコミュニケーションに関して少しでもお役に立てるよう、情報発信をさせていただきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
大竹 岳