私たちの取り組み
⑨ 外国人向けに作成する資料や、送信するメッセージの文章は「分かち書き」にする 〜今日からできる!日本語を使って外国人とコミュニケーションをとるコツ〜

新米日本語教師の大竹です!
富士山メソッドプロジェクトの担当者として、外国人の方々の生活サポートや日本語指導、外国人が働く企業のサポートをさせていただいております。
今回も急増中の在留外国人の方々とのコミュニケーションを円滑にする言語・手法として注目される「やさしい日本語」をもとにしながら、今日からできる簡単なコツ第9弾をご紹介させていただきます。
「分かち書き」とは?

今回は、外国人向けに日本語で作成する資料やメッセージに「分かち書き」を使うことで、外国人の方にとってやさしい日本語になるというコツをご紹介しますが、「そもそも分かち書きって何?」という方も多いと思います。
「分かち書き」とは、文章を書くときに、文章内の言葉を区切るため、言葉と言葉の間に「スペース」を入れる書き方のことをいいます。
具体的には、以下のような書き方を指します。
<通常の文章> 私は日本がとても好きです。
<分かち書き> 私は 日本が とても 好きです。
普段はあまり馴染みのない「分かち書き」ですが、実は世界の言語のほとんどが分かち書きを使用しています。「英語」や「韓国語」などは、分かち書きを使用している代表的な言語です。
また日本でも、幼児向けの「絵本」に書かれている文章は、ほとんどが分かち書きになっています。
なぜ「分かち書き」にすると、外国人にとってやさしい日本語になるの?
私は普段、富士山メソッドプロジェクトの外国人の方々に対して、スマートフォンのアプリでメッセージを送信することが多いです。
その中で以前、数名の外国人の方から「メッセージを分かち書きにしてほしい」という要望を受けたことがあります。
その時に理由を尋ねたところ、以下の2点を教えてくれました。
① 分かち書きによって、文章内の言葉(単語)が明確になるため、読みやすくなるから

日本語は漢字・カタカナ・ひらがなを織り交ぜながら文章をつくります。
その漢字とかな文字の境目が、それぞれの言葉(単語)を明確にするヒントになっていることが多く、日本語は分かち書きをしなくても比較的読みやすい言語です。
しかし、外国人の方々にとって「漢字」は難易度が高いです。そのため私たちは外国人に対してメッセージを送る際は、やさしい日本語を意識して「ひらがなのみ」で文章を作成することが多いです。
ところが、分かち書きをせずにひらがなのみで文章をつくると、以下の例文1のような文章になります。
(例文1)むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんがいました。
いかがでしょうか?
日本人でも「読みづらい」と感じると思います。
確かに自分事として置き換えて考えてみると、英語の文章が「Ilikejapan」(通常は「I like japan」)のように分かち書きではないと、とても読みづらく、なおかつ理解しづらいと感じると思います。
上記の(例文1)を「分かち書き」にすると、以下のような文章になります。
→ むかし むかし あるところに おじいさんと おばあさんが いました。
とても読みやすいと感じると思います。
文章の読みやすさという点で、分かち書きは非常に重要であることがわかります。
② 文章内に知らない言葉(単語)や漢字があっても、分かち書きだと調べやすくなるから

2つ目の理由は、知らない日本語があった時の「調べやすさ」です。
読みやすくなるということは、言葉(単語)の一つひとつを理解しやすくなると同時に、「どの単語がわからないのかが明確になる」ということでもあります。
(例文2)あしたは 10:00に かいしゃに しゅうごう してください。
例文2の下線部「しゅうごう(集合)」のように、外国人の方にとって難しい日本語が文章内に含まれていても、分かち書きによってそれぞれの言葉が明確になるため、母国語に翻訳して調べるという作業がしやすくなるそうです。
外国人が理解できるやさしい日本語を選んで話す・書くことはもちろん重要ですが、「外国人が調べやすくするために、言葉の一つひとつを明確にする」という視点での工夫も、外国人の方々にとっては大変ありがたい配慮となります。
上記2点が「分かち書き」をするべき理由です。
言葉と言葉の間にスペースを入れるという一手間はかかりますが、相手のことを考えると、とても大切な作業なのです。
文章を「分かち書き」にするための基本ルール
言葉と言葉の間に(ね)を入れても違和感がないところ = スペースを入れて言葉を区切るところ

では、実際に分かち書きで文章をつくる場面を想定しましょう。
実際に分かち書きで文章をつくるとなると、「どこにスペースを入れて区切れば良いのだろうか…」と悩む方が多いと思います。
一般的には、文章内のそれぞれの言葉の語尾に「ね」を入れても違和感がないところにスペースを入れると、読みやすく、なおかつ理解しやすい文章になると言われています。
私も日々実践していますが、とても意識しやすい分かち書きの基本ルールだと感じています。
具体的には以下のようになります。
(例文1)
■わたしは日本がとても好きです。
→ わたしは(ね) 日本が(ね) とても(ね) 好きです。
(例文2)
■むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんがいました。
→ むかしむかし(ね) あるところに(ね) おじいさんと(ね) おばあさんが(ね) いました。
分かち書きに正解はないため、「(ね)を入れても違和感がないところにスペースを入れる」ことを基本ルールとしながら、文章の作成者が読みやすいと感じるところにスペースを入れれば良いと思います。
もちろん、分かち書きの他にも、やさしい日本語で文章をつくるときには、これまでブログでご紹介させていただいたコツ②「1文を短くして、わかりやすくする」や、コツ⑧「難しい日本語は、「ルビ」と(かっこ書き)を使って説明する」などをあわせて意識することも大切です。
ぜひ外国人の方に向けた資料作成や、メッセージ送信の際に実践してみてください。
文章を「分かち書き」にする練習をしましょう!
最後に、文章を「分かち書き」にする練習をしてみましょう。
ぜひチャレンジしてみてください!


やさしい日本語に明確な答えはないため、参考としてご活用ください。
おわりに

「分かち書き」を実践しようとすると、資料やメッセージを作成する側には、文章内にスペースを入れるという一手間が加わります。
忙しい日々の中だとその手間を省きたくことは私にもよくありますが、その時こそ「やさしい日本語」の本質を思い出すように努めています。
やさしい日本語には、他者(外国人など)を思いやる心が根本にあります。
たとえ目の前の方に日本語が伝わらなかったとしても、やさしく伝えようとするその心が一番大切で、相手を安心させることになると私は思っていますので、ぜひ多くの方に実践していただけますと幸いです。
また、日本語教育の視点でみると、外国人の方にはなるべく「分かち書きではない日本語の文章を読めるようになってほしい」と、富士山メソッドプロジェクトでは常日頃から考えています。
日本語が上達するということは、漢字・ひらがな・カタカナを使って書かれている日本語の文章をスムーズに読めるようになっていくということも含まれています。
矛盾しているようですが、外国人の方への配慮をしつつ、日本語らしさ、日本語の素晴らしさを伝えていくこともとても大切だと思います。
目の前の外国人の方に合わせて、両方を追い求めていきたいと考えています。
次回以降も外国人の方とコミュニケーションをとる際に少しでもお役に立てるよう、「やさしい日本語」を使用するコツをお伝えさせていただきます。よろしければ、次回もぜひご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
大竹 岳