④「ニコニコ」「ゴシゴシ」などの擬態語・擬音語は、やさしい日本語で表現する 〜今日からできる!日本語を使って外国人とコミュニケーションをとるコツ〜

新米日本語教師の大竹です!

富士山メソッドプロジェクトの担当者として、外国人の方々の生活サポートや日本語指導、外国人が働く企業のサポートをさせていただいております。

今回のブログでも、急増中の在留外国人の方々とのコミュニケーションを円滑にする言語・手法として注目される「やさしい日本語」をもとにしながら、今日からできる簡単なコツ第4弾をご紹介させていただきます。
(「やさしい日本語」の詳細は、こちらをご覧ください👉 https://fujisan-method.jp/info/851/

コツ④「ニコニコ」「ゴシゴシ」などの擬態語・擬音語は、やさしい日本語で表現する

そもそも「擬態語」「擬音語」とは?

◾️擬態語(ぎたいご)

擬態語とは、ある物事を目で見たり、触ったりした時などに感じたことや気づいたことを、日本語の発音で「それらしく」表現した言葉のことをいいます。

<代表的な「擬態語」
・ニコニコ
・きらきら
・イライラ
・ニヤニヤ など


擬音語(ぎおんご)

対して擬音語とは、耳から聞こえる音」や「声」を、日本語の発音で「それらしく」表現した言葉のことをいいます。

<代表的な「擬音語」>
・ゴシゴシ
・ザーザー
・コンコン
・ゴロゴロ など

また、様々な状態や動き・音・声などをそれらしく言語化したもの(擬態語・擬音語の総称)のことオノマトペといいます。

なお、擬態語・擬音語をさらに細かく分類した「擬声語」「擬情語」といった言葉で表現されることもありますし、使い方によっては擬態語と擬音語の両方に属している言葉も多くあります。

ここまでご覧いただいて感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、擬態語・擬音語は、私達日本人にとっては馴染みのある言葉で、会話や文章において、ごく自然に使用しています。

しかしこの言葉が、外国人の方にとっては大変理解が難しい言葉なのです。

擬態語・擬音語は、「日本らしさ」を表す大切な文化

外国人の方々にとってなぜ擬態語・擬音語が難しいのかをお伝えする前に、それぞれの言葉についてもう少し詳しく説明させていただきます。

『日本オノマトペ辞典』(出版:小学社)によると、日本語には約4,500の擬態語・擬音語が存在すると言われており、日本は韓国に次いで世界で2番目に擬態語・擬音語が多い国と言われています。
また、歴史を遡ると、現存する日本最古の歴史書とされている『古事記』に擬音語が使用されていることから、日本では古くから擬態語・擬音語の使用が根付いていることがわかります。

ではなぜ、日本には擬態語・擬音語の語数や使用が多いのでしょうか?
理由は2つであると言われています。

① 島国である日本独特の自然観

島国である日本は、古くから大自然と共存しながら、独自の文化を築き上げていきました。

その中で、「自然や動物は逆らうのではなく、尊敬し、尊重すべきもの」という日本人独特の自然への向き合い方の一つとして「自然の状況や音を言葉で表現する」ことが行われるようになり、しだいに広まっていったと言われています。

② 日本の漫画・アニメ文化

前述の通り、日本人独特の自然観から広まっていった擬態語・擬音語を、近代では「漫画」「アニメ」で使用するようになりました。

ご存知の通り、漫画とアニメは日本が世界に誇る素晴らしい文化であり、漫画やアニメでは擬態語や擬音語を多用して、登場人物の心境や状況の音、感覚を表現しています。
それらの表現が日常にも浸透し、日本国内で多く使われるようになったと言われています。


これらの理由から、擬態語・擬音語は「日本らしさ」を表す大切な文化であるといえます。

外国人の方にとって、擬態語・擬音語はなぜ難しい?

日本の素晴らしい文化ではあるものの、コミュニケーションにおいては、擬態語・擬音語は外国人の方を困らせるものになっています。
外国人にとって擬態語・擬音語が難しい理由は、主に2つあると私は感じています。

難しい理由①
直訳できる母国語が無い

日本人が日本語の発音で「それらしく」表現した言葉であるため、母国語で意味を調べながら覚えるということができません。

また、感覚や音などを言葉にしたものですので、意味を問われた方も、教えるのが難しいです。
「サラサラってどういう意味ですか?」と聞かれたら、すぐに答えるのはなんだか難しいですよね…。

難しい理由②
1つの擬態語・擬音語に、多くの意味・用法が含まれているものがある

例えば、ゴロゴロという言葉だけを聞いた時、何が思い浮かぶでしょうか?

「雷がゴロゴロと鳴っている」「部屋でゴロゴロしている」「石がゴロゴロ転がっている」など、人によって思い浮かぶ状況が異なるかと思います。
「ゴロゴロ」には用法が10もあると言われています。

このように、1つの擬態語・擬音語に多くの意味と用法があることも、外国人の方を悩ます要因となります。

擬態語・擬音語を外国人に伝える方法

では、擬態語・擬音語をどのように外国人の方に伝えれば良いでしょうか?
私は重要なポイントが2つあると考えています。


① 会話や文章に、擬態語・擬音語を使わない

外国人の方にとってやさしいという観点で考えると、「擬態語・擬音語は使わない」ことを常に心がけてコミュニケーションをとることが大切です。

使わないことに意識を向けると言葉選びに時間がかかってしまい、会話のテンポが遅くなってしまうことを気にしてしまう方がいるかと思いますが、そこは心配しなくて大丈夫です。
こちらがゆっくり話しているつもりでも、外国人の方にとっては速いと感じていることが、私の経験上ほとんどです。
言い換える言葉が出てこなくて詰まってしまうことを気にせずに、目の前の外国人の方に伝わる言葉をゆっくり探しながら、コミュニケーションをとると良いと思います。


② 母国語ではなく「やさしい日本語」での言い換え語を探す

前述した通り、直訳できる母国語が無いことがほとんどです。
その場合は「やさしい日本語」に言い換えることができないかを考えましょう。

例えば、ニコニコしている」→「笑っている」というように言い換えます。

擬音語・擬態語は数多くありますし、外国人の方の日本語レベルによって伝わる日本語が限られることもありますので、全てをやさしい日本語に言い換えることは難しいです。
しかし、東京都立大学が公表しているきらきらオノマトペリストなどを参考にしながら言い換え語を探すと良いです。
様々な工夫と努力をして、相手に伝わる「やさしい日本語」を見つけましょう。

なお、やさしい日本語なのか、難しい日本語なのかを判断するには、本シリーズの中でよく紹介させていただいているリーディングチュウ太を活用すると良いです。
N5~N4レベルの言葉はやさしい日本語と言えます。

擬態語・擬音語 → やさしい日本語で表現する練習をしましょう!

最後に、擬態語・擬音語をやさしい日本語で表現する練習をしてみましょう。
ぜひチャレンジしてみてください!

※上記は言い換え例です。答えではありません。
  やさしい日本語に明確な答えはないため、参考としてご活用ください。

おわりに

ここまで説明させていただいた通り、外国人の方と円滑にコミュニケーションをとるという観点では、擬態語・擬音語は使わずに、伝わる日本語に言い換えることが大切です。

しかし、「擬態語・擬音語は日本らしさを表現したもの」という観点で考えると、外国人の方に擬態語・擬音語の意味や使い方を伝えていくということも、とても大切なことである私は思いました。

実際、私が関わらせて頂いている外国人の方は、アニメなどで擬態語・擬音語に触れていて、興味がある、使えるようになりたいという人が多いです。
また、日本語能力試験(JLPT)でも擬態語・擬音語の意味や使い方を問う問題が出題されていることからも、外国人の方に擬態語・擬音語の意味・使い方を伝えていく必要性は明らかだと思います。
どうすれば伝えることができるのか、まだまだ私自身も試行錯誤しており、難しさを感じています。
日々の実践を通じて、勉強していこうと思います。

日常や仕事において、私達の思いや考えを日本語で正しく伝えられるようになるために、次回以降も「やさしい日本語」を使用するコツをお伝えさせていただきます。

よろしければ、次回もぜひご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


大竹 岳

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