私たちの取り組み
技能実習生が入社する前の1ヶ月間の教育を担当しました 〜2023年8月入国後講習 実施レポート〜
2023年8月に、富士市の企業へ入社前のミャンマー人技能実習生6名の入国後講習を担当させていただきました。
今回は入国後講習の目的や、入国後講習中の実際の様子をお伝えいたします。
入国後講習の目的
入国後講習は「開発途上国等の経済発展を担う人材を育成する」という技能実習制度の目的を果たすため、実習生の日本語能力及び日本社会に対する理解を高めることを目的として実施する講習です。
日本で始まる日々の生活を含めて、技能実習が円滑に進むようになるための教育を行うことが、入国後講習の役割となります。
実習生を日本に受け入れる場合、企業との調整や手続きを行う監理団体(企業単独型受入れの場合は企業)は、企業での実習開始前に入国後講習を受講させることが法律によって義務付けられています。
入国後講習についての詳しく知りたい方は、こちらもぜひご覧ください。
技能実習生が入国後に受講する「入国後講習」とは? – 富士山メソッドプロジェクト (fujisan-method.jp)
今回は監理団体様からの委託を受け、株式会社Roadコンサルティングが入国後講習を担当させていただきました。
入国後講習の一日のスケジュール
上記が一日のスケジュールです。
月曜日〜金曜日に一日8時間、週40時間講習を実施します。
約1ヶ月間体調を崩さず、集中を保って上記スケジュールに対応することも、企業での実習開始への重要な練習となります。
Road入国後講習の特徴と内容紹介
ここからは、今回の入国後講習で実施した内容をご紹介いたします。
富士市・富士宮市への入居サポート
今回の入国後講習は8月9日から開始しましたが、実習生の皆さんが日本へ入国したのは8月8日の講習開始前日でした。
講習開始前に住む家の環境を最低限整えることは、とても重要です。
したがって入国日は、荷物の整理整頓や家電の使い方、ゴミ出しなど最低限の生活の基盤づくりと、市役所での転入手続きをサポートしました。
朝清掃
気持ちの良い環境で1日をスタートする大切さや、清潔・安全を大切にしている日本文化を伝えるため、毎朝15分間の清掃を行いました。
室内の床清掃や窓ふき、雑草抜き、石拾いなどを実施しました。
朝礼
朝清掃の後は、私達Roadの社員と一緒に朝礼を実施しました。
朝礼では以下4つのことを行いました。
(1)挨拶練習
挨拶は人間関係・コミュニケーションの基本であり、実習においてもとても重要です。
今回の講習では、私たちが日々大切にしている「明るく元気に挨拶する」ことや、発声や礼を合わせることを通じて「同じ方向を向いて物事(仕事)に取り組む大切さ」「仲間の異変などを感じ取る時間でもあること」を日々伝えました。
(2)経営理念等の唱和
Roadグループの経営理念や行動指針等の唱和を一緒に行いました。
実習生の皆さんは当社で実習を行うわけではありません。
しかし、朝礼で経営理念や目標、行動指針を唱和してから一日のスタートを切る企業様も多いと思います。
経営理念や目標を毎朝唱和することの意義や習慣を覚えるために、唱和を一緒に行いました。
(3)報告練習
報告や伝達を朝礼で実施する企業は多くあります。
今回の入国後講習では報告の練習として、「今日の体調」などを朝礼時に報告しました。
(4)歌&ダンス『上を向いて歩こう』
「朝は元気良くスタートしましょう!」という実習生の皆さんからの提案により実施しました。
『上を向いて歩こう』はミャンマーでも有名な曲で、コロナ禍などの苦しい状況の中、多くの方がこの曲に救われたそうです。
皆さんはミャンマーの学校で歌とダンスを練習していたこともあり、私たちスタッフは皆さんに教えてもらいながら、毎日元気よく歌って踊りました!
朝礼の様子は、ぜひこちらの動画をご覧ください。
①「日本語」
Road入国後講習では、「実習現場や日本での日常におけるコミュニケーションを円滑にするための日本語教育」に重点を置きました。
日本語講師の川邊様を中心に、以下のような場面で使用する日本語を取り扱いました。
- はじめまして(挨拶や自己紹介)
- 買い物・外食
- 仕事での報告・連絡・相談
- 病気・けがをしたとき
- 外出先で困った時の質問や受け答え など
それぞれ座学だけでなく、ハガキを書いてポストに投函したり、日本語を用いてミャンマーの地図を作成したり、外出先での日本語教育も実施しました。
②「生活一般」
生活一般の授業では、実習生の皆さんが今後日本で経験する生活場面を想定し、それらを入国後講習中になるべく多く体験するプログラムを実施しました。
以下のような内容を取り扱いました。
- 寮近隣のお店、施設などの案内
- 銀行口座開設・ATMの使い方
- 荷物の郵送方法 ・自転車・電車・バス乗車練習 など
また、日本語に触れながら日本・富士市の文化を体験するために、うちわや紙バンドを使ったミニかごの工作をしたり、地域の名所を巡ったりもしました。
③「法的保護」
技能実習法令・入管法令・労働関係法令に関する事項などについて取り扱いました。
実習中に法令違反があった時に自らを守ったり、対応できるようにするために、各種法令について8時間の講習を実施しました。
法的保護は専門的な知識を有する資格者による実施が必須となるため、社会保険労務士であるRoadコンサルティング代表の大道が担当しました。
④「日本での円滑な技能等の修得等に資する知識」
実習先で必要となる技能や知識の情報提供をするための科目です。
今回はミャンマーと日本を精通しているニンニンユー様に「日本人と上手に生活や仕事を行うコツ」をテーマに特別授業を実施していただきました。
特別授業では富士山メソッドプロジェクトのスタッフ・サポーターの皆さんとの交流の場も設け、それぞれの立場やご経験から、実習を充実したものにするためのアドバイスをいただきました。
また、介護職種で実習を開始する実習生は「介護導入講習」を入国後講習中に42時間受講することが必須となります。
今回は大原介護福祉専門学校様に介護導入講習をご担当いただきました。
介護に関する専門的な知識を学ぶには最高の環境をご用意いただき、合計6日間、介護に必要な施専門的技能・知識を学びました。
清掃・おわりの挨拶
「使った場所をきれいにしてから帰る」ということも、日本が大切にしている考え方であり、特徴です。
授業終了後は清掃を行い、「お疲れ様でした」「失礼いたします」などの挨拶を交わして一日を終了しました。
技能実習生からの感想
- 日本語や生活のルールを知ることができて、ミャンマーと日本の違いがよくわかりました。この1ヶ月で日本に慣れることができました。
- 日本での買い物や移動などが不安でしたが、沢山練習したおかげで緊張せず外出できるようになりました。道にある点字ブロックには感動しました。
- 日本人の方と日本語で会話することが怖くなくなりました。皆さんとても優しいです。これからも巡回やレクリエーション、日本語教室などで会うことができるので、とても心強いです。
- 授業や介護導入講習によって、実際の実習のイメージが湧きました。教わったことを大切にします。入社はとても緊張しますが、これからも頑張ります!
- 日本での生活はとても楽しいです。皆さんのおかげです。ありがとうございます。
- 「和」を大切にしている日本人の心が、ミャンマー人に似ていると感じました。会社でも家でも「和」を大切にします。
おわりに
今回入国後講習を担当させていただくにあたって「実習生の皆さんも受け入れ企業様も安心して実習をスタートできる状態にする」ことを目標に実施しました。
その目標で実施したこともあり、実習生の皆さんがどのような希望や不安を抱いて日本に来ているのかということを、この1ヶ月間で強く感じることができました。
また、日本の特徴やルール・マナーを講習で伝えることを通じて、日本の良さや他国の良さも学んだと同時に、自分が生まれ育った日本という国のことですら、自分は深く知らないということを痛感しました。
そして、「心」の部分には、国籍や出身などを超えた美しいものが必ずあり、日本の多くのルール・マナーや習慣には、その「美しい心」が土台にあるのではないかということ、そしてそれらは幸せへのヒントになるのではないかと感じました。
私達がそれを理解し実践できていれば、外国人の皆さんにも必ず伝わると思います。
実習を通じて日本の技能や知識を母国へ持ち帰るだけでなく、日本人が大切にしている「心」も持ち帰っていただけるようなサポートをしていこうと思いました。
富士山メソッドプロジェクトは「富士山の麓でみんなが幸せになる!」をスローガンとしています。今後もスローガンの実現に向けて、入国後講習や日々のサポートに真摯に取り組んでまいります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
大竹 岳