外国人雇用・採用ノウハウ
技能実習生が入国後に受講する「入国後講習」とは?
今回は、外国人技能実習生が日本で必ず受講しなければならない「入国後講習」について、説明させていただきます。
その前にまず、技能実習制度の概要を簡単に説明いたします。
「技能実習制度」は、国際社会の調和と発展のため、先進国である日本の技能・技術・知識を開発途上国等へ移転し、開発途上国等の経済発展を担うことができる「人づくり」に協力することを目的とした制度です。
技能実習生は技術や技能・知識を身に付けるために、受入企業で最長5年間実習をします。
「実習」といっても、企業では従業員の一員として実務を行うため、原則として週40時間、1日8時間働き、対価として賃金を得て日本で生活をします。
労働条件は日本人従業員と同等ですので、賃金も日本人が従事して受ける額と同等又はそれ以上の額を支払うことが企業には義務付けられています。
技能実習生の立場からすると、慣れない異国の地で生活をしながら日本人従業員と同様の実務を行うわけですから、技能実習は簡単なものではありません。
さらには実習を継続するために「技能検定」を5年間のうちに3回合格しなければなりません。
したがって日本の生活にいち早く順応し、日本語でのコミュニケーションを覚え、実務を通じて技術や技能・知識を身に付ける必要があります。
(「技能検定」については、ぜひこちらをご覧ください↓)
技能実習生の「技能検定」に同行しました! – 富士山メソッドプロジェクト (fujisan-method.jp)
入国後講習とは?
技能実習は上記の通り苦労や不安も多く、技能や知識の習得も求められます。
そのような技能実習を円滑に進め、技能実習制度の目的を達成するために、技能実習生は「入国後講習」というものを必ず受講することになっています。
条件によって入国後講習の実施期間等は異なりますが、およそ1か月程度、日本国内で入国後講習を受講してから、各企業での実習を始めます。
入国後講習の実施時間数
入国後講習は、技能実習1年目の活動予定時間の1/6以上講習を実施することが必須となります。
例えば、1年間の活動時間を1,920時間(月160時間×12か月=1,920時間)と技能実習計画で予定した場合、その1/6の「320時間」以上の入国後講習を受けてから企業での実務を始める必要があります。
参考:公益財団法人 国際研修協力機構 https://www.jitco.or.jp/download/data/nihongo_shido.pdf
※日本に入国する前の6ヶ月以内に、1ヶ月以上かけて160時間以上の講習を受けた場合、
入国後講習は1/12以上の実施で良い
日本に入国する前の6ヶ月以内に1ヶ月以上の講習(入国前講習)を受けた場合、入国後講習は活動予定時間の1/12の実施で良いとされています。
例えば1年間の活動予定時間を上記に合わせ1,920時間とすると、入国前講習を実施して日本に来た場合、1,920時間の1/12である「160時間」以上が入国後講習に必要な時間となります。
参考:公益財団法人 国際研修協力機構 https://www.jitco.or.jp/download/data/nihongo_shido.pdf
入国後講習で実施する科目
講習では以下4つの科目を全て取り扱うことが定められています。
① 「日本語」
文法・聴解・読解・文字・会話など、日本語の基礎を学びます。
日本での生活や実習現場で生きる日本語の習得が主な目標となるため、「会話」の練習を重視し、座学だけでなく、外出先での日本語のコミュニケーションも経験します。
② 「生活一般」
日本のルールやマナー・ゴミの分別や出し方・自転車の乗り方・買い物の仕方など、日本での生活に困らず、健康で充実した毎日を送るための学習をします。
③ 「法的保護」
技能実習法令や入管法令、労働関係法令など、出入国又は労働に関する法令の規定を学び、違反が起きている時の対応方法などについて学びます。
この科目は「専門的な知識を有する資格者」が講義を行う必要があります。社会保険労務士と行政書士が講習担当者に該当します。
④ 「日本での円滑な技能等の修得等に資する知識」
オリエンテーションや技能実習ガイダンスの講義を通じて、技能実習への心構えや企業で働く上での規律等を学びます。
また、介護職種の技能実習生が受講する必要がある「介護導入講習」など、業務で必要となる技能や知識を経験して学ぶ講習もこの科目に該当します。
平成29年11月に新たに技能実習制度の対象職種に追加された「介護」には、講習内容や講師の条件等に固有要件があり、他業種とは異なります。
(厚生労働省 技能実習「介護」における固有要件について↓)
https://www.otit.go.jp/files/user/docs/info_kanri_11.pdf
入国後講習の実施者
最後に、入国後講習の実施者について説明いたします。
技能実習生の受け入れには、日本の企業が直接外国人材を受け入れる「企業単独型」と、事業協同組合等の営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、各企業での技能実習をサポートする「団体監理型」という2種類があります。
どちらの受け入れ方式でも入国後講習は必要となり、原則として「企業の実習実施者」または「監理団体」が講習を担当することになっています。
ただし、どちらの受け入れ方式も、適切な者に委託して講習を実施することも可能となっています。
おわりに
富士山メソッドプロジェクトの運営を担う私達Roadコンサルティングは、監理団体様からの委託を受け、今年の8月中旬~9月中旬に富士市で実習を始める技能実習生の入国後講習を担当させていただきました。
今回入国後講習を担当させていただいたことにより、技能実習生の皆さんがどのような覚悟をもって来日されたのか等を肌で感じることができました。
また、日本にはない外国の素晴らしさや、逆に日本の素晴らしさを再確認することができました。
外国人の皆さんとお互いの国について話をしたり、日本の歌を一緒に歌ったりする時間はとても楽しく、充実した時間でした。
次回は入国後講習中の様子や、具体的な実施内容をご紹介させていただきます。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
大竹 岳